多属性商品を対象とした交渉における
エージェントの戦略獲得
近年のインターネット普及により,電子商取引が注目されている.電子商取引では,単にネットワークを用いた取引を行うだけでなく,ユーザを効果的に支援する技術が求められている.特に,交渉はユーザによって能力の格差があるため,その格差を解消するための交渉支援や交渉戦略が注目されている.交渉支援の一つとして, エージェントがユーザの代わりに自動的に交渉することによって,ユーザの負担を軽減することが考えられる.しかし,ユーザを支援するエージェントはあらゆる相手に対応できる優れた戦略を持っていなければならない.このため,優れた交渉戦略の獲得が重要となる.
従来,大きく分けて 2 つの交渉に関する研究が行われてきた.1 つは価格のみを対象とした単属性交渉に関する研究 [Tsang 02, Huang 02] である.価格のみの交渉とは,売り手と買い手がお互いに希望価格を提示し,双方が妥協案を出し合うことで合意を導く交渉である.しかし, 実際の交渉では価格以外に個数,納期,サービスなどをの交渉に関する研究 [Fatima 02, Coehoorn 04, Jonker04, Bosse 04] である.この場合,交渉項目が多くなるにつれて,交渉は複雑になり,より良い合意を導くことが困難になる.そこで,よりよい合意を導くための交渉支援技術が重要となる. 従来研究では,相手の提案に自身の提案を近づけることで,合意に至りやすくするという単純な戦略のため,望ましい戦略とはいえない.多属性商品の場合,双方の嗜好を反映し,双方の利得を高めることを重視する交渉戦略が望ましい.このように双方の利得を高めようとする交渉形態を利益交換型交渉 (win-win
交渉) という.